|+| THE BOOK OF TABBASA |+|

001.jpg 

"有角神舞踏" 解説 by ゾンビ本庄
 

1. ダンシング・フリークス 

 モーリーはこの頃、ボリューム奏法にこっていて、ヒマさえあればヒョホヒョホ鳴らしていた。そこにハカマダと坂口がドンタカドンタカつっこみをいれて、あら不思議、あっという間に曲になった。これまで耳にしたことがないような奇妙な曲で、しかもワン・コード。「こりゃあ、オレの責任は重大だ。ああ楽しい!」。
 家に帰って最初にかけたのが、めっちゃイカしてるジョニー・ウインターの古いレコードだった。A面1曲目の『ローリン・アンド・タンブリン』を聴いたとたん、歌メロと歌詞が同時にひらめいて、翌日のリハーサルではしっかり完成させていた。最近になってからモーリーに『ローリン・アンド・タンブリン』を聴かせ、「これが元ネタなんだけど、わかってたかあ?」と尋ねたら、「ぜえんぜん違うよっさ!」と一蹴された。うーん、確かに違うかもしれない。だけ 
ど、嘘だと思うんなら歌詞カードを見て歌ってくれ、バッチ・グーだから。
 かくして、『ダンシング・フリークス』はいとも簡単にできてしまい、アルバム・タイトル、さらにはジャケットまで、このイメージで統一された。あの素晴らしい影絵は当時モーリーの彼女、現奥様であらせられるかよちゃんの作品。みんなでオレのアパートに遊びに来ていた時、ゴヤやフリードリヒの載っている画集を見たのが、ああいう形になったという。完成品を前にして「これはスゴい!」、「いいじゃないか!」、「かよちゃん、天才!」と、メンバー、スタッフ一同、感激しまくった。ジャケット買いした人もいたに違いない。あんなジャケのアルバムをみつけたら、オレだって買わずにいられない。かよちゃんにはコーラス・パートでも、全面的に協力してもらった。
 とにかく、ケミストリーというのはこういうものだという見本だが、これじゃ解説にならないので、歌詞の浮かんだ背景を考察してみる。
・トッド・ブラウニング監督の『フリークス』。強欲美女とミュゼット紳士の結婚式の宴会シーンが焼きついていた。曲のオープニング・ノイズはあれのマネをしている。それから、サイテー映画として有名な『ブラッド・サッキング・フリークス(悪魔のしたたり)』。これもオレは大好きで、登場するミュゼットがワルサをして喜びハネる姿が目に浮かんだ。
・当時から崇拝している作家、アーサー・マッケンの著作『パンの大神』。「人間が触れてはいけない古代の神々が、この世界には存在している。」というテーマの作品。この人の、怪奇でグロテスクであるにもかかわらず、荘厳で静謐な作風には圧倒される。
・数年前に書いた小説。「愛妻と幸せに暮らしている男が、疑問を持った。自分は妻のどこを愛しているのだろう、何ゆえ愛しているのだろう。美しい容姿か、優しい言葉か、健気な気づかいか、それとも豊満な肉体なのかと。そこで男は妻の顔を潰し、舌を抜き、精神の均衡を狂わせ、肉体を破壊した。男の安否を気づかい友人が訪れたところ、男は『愛してる……、愛している……。』とつぶやきながら、腐敗した妻の肉を啜っていた。」『ダンシング』の歌詞は小説 の『欠損』に対して『過剰』が問題になり、小説とは逆に主人公が愛の有無を問う形になっている。裏返しだ。
・この頃、沖縄で活躍していたアマバンに、『ヌード』というテクノ・ポップ・バンドがあって、女子高生、女子中学生に絶大な人気を誇っていた。メンバーは皆ダンスがウマく、歌もウマい。モテて当然である。オレなんかはステージで、怒鳴って、叫んで、走り回るだけだ。ふん、いいんだもん。その開き直りが『笑うがいいや、ブザマなダンスを』に結実した。
 

2. 聖杯

 扇情的なリフと美麗なソロが彩るモーリー・メタル・ナンバーの典型。後期になるとオレも作曲に参戦したため、Tabbasaの曲はスピーデイでポピュラリティの高いモーリーの曲と、ストレンジでマニアックなオレの曲に二分された。「どっちが好きかでファンの性格がわかるなあ。」と言ったのはハカマダだ。
 歌詞はこれまたアーサー・マッケンの『大いなる来復』がヒントになった。この物語は怪奇小説でもホラーでもない。「ある海辺の村で突如として不治の病人達が回復し、何十年も喧嘩していた人達が仲直りし、みんなが幸せになったところに聖杯を手にした聖人達がやってきた。」なんだあああ! なんなんだあああああ! それだけなのかああ! すげええええ、ヘンじゃないかあ! だけど、えれえ、かあああっこいい!
 錬金術とは世俗の富を求めるのではなく、鉛という卑金属を完全無欠な金に変えるかのごとく、卑俗な人間が完全な存在に近づくための方便なのだ。『聖杯』は、世界が完全になることを予知しながら、未熟さのために自分の望む域にまで高められない錬金術師の焦燥を独白にしている。
 コーラスには、琉大ロック同好会の後輩達が嬉々として参加してくれた。エンディングの超絶シャウティングはオレと師匠をおなじくするスーパー・ハイ・トーン・ヴォーカリスト、日高くんの熱演。彼は『暴君竜の黄昏』でも怪鳥ヴォイスを披露してくれている。
 

3. アイリス館で

 この時期、あの『ゼルダ』と共演できたことに、メンバー全員が感慨を抱いていた。これと次の『野バラの貴公子』のバッキングを聴いて、相当な影響受けてるんじゃないかとオレは思った。かくいうオレ自身、同様の指摘をモーリーからいただいたが。
 歌詞は、アラン・レネ監督の『去年マリエンバードで』のイメージ。延々と続くシンメトリカルな庭園に、名前も明かされない登場人物達。意味不明でカミあわない会話が延々と続く。
 『アイリス』は、あの『サスペリア』に登場する花でもある。名前の響きが心地良かったので調べてみたら、『虹。天地をつなぐ使者』。これはいい!
 そこで、「死んでから生まれ変わるまでの間に滞在する『アイリス館』で、片思いをしていた人に出会ったけれども、想いを伝えることすらできなかった。」という物語ができた。
 

4. 野バラの貴公子 

 実はこの曲、当初は好きになれなかった。バッキングにオレが思うところの『Tabbasa色』を感じなかったからだった。加えて、せっかくアイリッシュ・トラッド風の流麗な歌メロと歌詞をこしらえたのに、モーリーのヤツに野太い声で歌メロを変更され、「まあ、いいか。」と歌詞まで改変を余儀なくされた。当然ながら、ハモリコーラスはモーリーが担当している。
 だがしかし、「旅する無粋なオトコが、絶世の美女妖精に誘惑される。けれども、彼は妖精としとねを共にすることができなかった。イバラのベッドで同衾などしようものなら、おっかない奥様に編んでもらったマフラーに穴を開けることになるからだった。」という脱力フォークロア風にしたら俄然面白くなって、あいのてまでできてしまい、後輩のレディス・バンドに手伝ってもらった。みんなノリノリで、特にインギー・てっちょの悪ノリは芸術的ですらあった。 
彼女らが生粋のうちなんちゅだったから、いきおい琉球民謡風になって、「あきさみよー!」、「でーじーよっさ!」のデキになった。
 

5. 牧神のマドリガル 

 オレがベースで創ったコーラスと歌パートにメンバーが摩訶不思議なアレンジを加え、なんだかよくわからないけどステキな曲になった。
 歌詞は、「『ダンシング・フリークス』で覚醒したみにくいアヒルの子が、本来自分のいるべき場所に戻ってきた。」という内容。ラストのコーラスは最初の「ここちよおーくー」の上に無理矢理、別の歌メロと歌詞を乗っけてしまった。バッハの学究的作品を幼少の頃から聴かされていた境遇ゆえ、「こんなのありー? めちゃくちゃじゃああん!」といまだ良心の呵責に苛まれ続けている。
 アナログ時代だったから、A面トップがA面ラストがつながるという秘かなコンセプトに満足した。中盤のスキャットは、この頃沖縄で人気があったレディス・バンドのセクシー&グラマラスなヴォーカリストに頼みこんでやってもらった。キワモノ・バンドの自己満ヴォーカリストとしては非常におそれ多く恐縮のキワミだったが、快くひき受けてくれたことに感謝した。しかし、意外だったのが、このヒト、ステージではめっちゃオンナー!だったのに、この作品では神秘的な歌声を聴かせてくれる。やっぱりタダ者ではなかったのだ。
 

6. イシュタル・ゲート 

 オレがベースで原型を創った曲で、『ダンシング・フリークス』をのぞけば、個人的ベスト・トラック。もとは『南国原住民の宗教舞踊』みたいな、もっと泥臭いノリだった。そこへ、青森出身のハカマダが「えええいっ! ねぶた祭り!」とばかりにドラムを叩きこみ、モーリーがボレロみたいなギターを弾いたら、原曲とはまた違った味わいになった。
(こういう場合、坂口がオレのベース・ラインをコピーする。こいつはとても不思議なヤツで、オレよりずっとベースがうまいクセに「ゾンビさんのは難しいっす。」を連発する。そのくせひとたびコピってしまうと、オレにはとてもできないような技をちりばめる。)
 歌詞は、オレがその後、長編小説や曲によく使ったシュチュエーションで、「本来、生死を超えて永遠に一緒にいるべき恋人と、違う時空に生まれてきてしまった。けれども、世の人々はそんなことを信じず、今の『生』こそが絶対的なものだと思っている。それゆえ孤独を感じながらも憧れは捨てきれず、折り合いのつかない世に生きながら、いつかは再び会えることを夢見ている。」というもの。
 

7. ライカンスロープ 

 モーリーの正統的ギター・リフとバッキングに、オレがオリエンタルな歌メロと時代錯誤な言葉を入れた。
 人狼がテーマになっているが、厳密に言うと、人が狼に変身するには3パターンある。
1、普通の人間が狼の強さを得たいがため、狼の毛皮を身にまとい、炎の前で呪詛を唱えるという魔術的なもの。
2、もともと人狼の血族に生まれ、狼に変身する宿命を背負っているもの。伝説では、この種族は薬指が中指よりも長いとされている。
3、人狼や野生の狼に噛まれて、自分も変身するようになってしまうもの。
 この歌詞は1と2を合わせたもので、狼の血族に生まれた者が、儀式を通じて狼に変身する際の高揚感や、選ばれし者であることの誇りを描いている。
 

8. 白亜紀来復ー暴君竜の黄昏 

 自宅でベースをべんべんならしながら「こういうヘヴィな曲には、どんなコンセプトをもってきたらいいだろうか。」とあれこれ考え、至福の時を過ごしていた。すると、レコード・ラックから、マーク・ボランのティラノザウルス・レックスのレコードが落っこってきた。「おわっ! ティラノザウルス! こりゃいい!」と思ったとたん、大昔の風景が眼前に展開され、「裸子の葉叢にしのつく雨/泥とワインとひきずる肉のひだ」が飛び出してきた。
 『恐竜とは滅び去った哀れな生き物』とするむきもあるが、そりゃゴウマンというものだ。考えてもみて欲しい。万物の霊長だなんだとイバっている人類なんか、直立してからたかだが数百万年。一応、ニンゲンらしくなってからだと、わずか数万年しか経っていない。それに比べると、恐竜の時代は一億年以上! ケタからして違う! 
 人が造物主に似せて創られたものなら、ティラノザウルスだってそうだろう。しかも連中の方がずっと繁栄期間は長いのだ。とはいえ、繁栄があれば衰退もある。……ということで、わずか五分で数千万年分語ってしまったというスペクタクル超大作である。
 これの前のギター・インストロメンタルは、これも怪獣好きのモーリーが(あ、ハカマダくんもめちゃくちゃ怪獣が好き。某メジャー・バンドが来沖した際、インタビューに行ったカレは音楽の話そっちのけ、怪獣話で盛り上がり、来賓の面々をアキれさせた。メタル系に走る人って、やっぱり怪獣好きが多いよねえ。)、「ゴジラが出てきそうな曲ができたよっさ!」とひとりでレコーディングした作品に、オレがそれらしいタイトルをつけたもの。風景と物語が同時に見えてくる。
 

9. 弥生、十六夜、銀胡蝶 

 モーリーと二人、リハーサル・スタジオで創った。『屋根裏の子供達』の時はハカマダとだったが、リハに欠員が生じるとたいていこうして曲を創る。オレがベースで、ハモンド・オルガンの音を想像しながら「たーりらー、らりら・りららー」の部分を弾き、モーリーがそれに肉付けしていった。この時ベースはコードで弾いていたのだが、坂口が「オトがぶつかる」と単音にした。その分、ギターが頑張って、メンバー一同アレンジにコリまくり、これも他に類をみないような曲になった。
 歌詞と歌メロがいろいろ浮かんできたものの、決定打がない。そんな時、深夜テレビの劇場中継に魅力的な女優さんが出演していて、つい最後まで観てしまった。エンド・クレジットで『銀胡蝶』という名前とわかり、がーん! ときた。『銀胡蝶』! 『銀胡蝶』! なんてステキなんだろう! 桜吹雪にも、まばらな白髪にもなり、臨終に際して、浮かんでは消える追想にもなる!
 「恋人を若い頃に亡くした女性が、面影を偲びながら年老いてゆく。いくつも春を過ぎ、秋を過ぎ、やがて死ぬ時がきた。死ねば恋人に会えるが、あの世の人の年齢は死んだ時と変わらないという。こんなに老いてしまった自分を自分とわかって欲しい、けれどもやはり、老いてしまった自分を見られたくはない。」。
 母親が歌舞伎好きだったもので、小さい頃からよく連れていってもらった。華美な衣装、大仰な演出、時間経過や人間関係を描く大胆な手法など、今でも興味は尽きない。その経験のせいか、『弥生、十六夜、銀胡蝶』。タイトルからして、春と秋の季語が混在している。死を間近にひかえた老婆が、人生の四季折々を走馬灯のように追体験しながら、桜吹雪の中、黄泉の国に旅立ってゆくという情景を想い描いてもらえれば幸いである。
 

10. ネフェルトの祈り

 実質上、Tabbasaのラスト・ソングとなったこの曲のみ、4トラックのカセット・デッキではなく、ちゃんとしたレコーディング・スタジオで収録され、メンバー最後の底力により充実した楽曲にしあがった。
歌詞は古代エジプト史の中で、もっとも感銘を受けた挿話に基づいている。
夫のアメン・ヘテブ4世がアモン神神官達の迫害により信仰を翻した後でも、太陽神アトンを信じ続けるネフェルティティ。
『どんな逆境にも耐え、信念を貫け』。
オレの歌がオレに発したメッセージだったのかもしれない。
 

 
 

 

"有角神舞踏" NOW ON SALE

413TRACKS -MAIL ORDER- 特典:ポスター LinkIcon 
SONGS in iTunes Music Store (All of the world! )LinkIcon 
Additionally, it is selling it by  ON LINE SHOP a lot.!

ゾンビ本庄 WEBSITE LinkIcon
TOTAL STEEL Okinawa WEBSITE LinkIcon

413TRCAKS -MYSPACE, YouTube Check it out!
 
 

有角神舞踏

有角神舞踏 DISC 1 (CD)
1.ダンシング・フリークス 2.聖杯 3.アイリス館で 4.野バラの貴公子 5.牧神のマドリガル 6.イシュタル・ゲート 7.ライカンスロープ 8.a)白亜紀来復 b)暴君竜の黄昏 9.弥生、十六夜、銀胡蝶 10.ネフェルトの祈り(ボーナストラック )
【'88.11月オリジナル12inchLP発売】
 

幽鬼達の饗宴

幽鬼達の饗宴 DISC 2 (CD)
1.序曲『爛陽』 2.王陵の谷 3.アギの橋 4.鬼(手の鳴る方へ) 5.屋根裏の子供達 6.ララバイは最後に(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.坂口)〜「Tabbsa Vol.Ⅳ」より
7.ヴェルヴェット・キティー 8.悦楽園 9.葬列(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.かまるー)〜「Tabbsa Vol.Ⅲ」より
10.バフォメット・ライジング 11.マダム・エルゼベエト(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.原)〜「Tabbsa Vol.Ⅱ」より
12.オープニング 13.ジュダス 放浪者の夢 14.スターチャイルド 15.死者達の夜明け(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.原)〜「Tabbsa Vol.Ⅰ」より
16.沼へ(ライヴ・ヴァージョン)(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.原)〜「Tabbsa Vol.Ⅱ」より
 

異邦からの誘惑

異邦からの誘惑 DISC 3 (DVD)
1.屋根裏の子供達   2.ヴェルヴェット・キティ  3.魔道師の船 〜 1987.2.15 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
4.ダンシング・フリークス 5.王陵の谷 6.鬼(手の鳴る方へ) 7.ネフェルトの祈り 〜 1988.11.6 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
8.葬列  9.セイレーン・エレジー  10.スパイダー・スパイダー 11.ギター・ソロ 〜 1987.2.15 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
12.悦楽園 〜1986.11.9 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
13.マンゴ・ソング 〜 1987.11.8 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
14.マダム・エルゼベエト 15.死者達の夜明け 16.沼へ 17.ジュダス 〜 1987.2.15 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA